(3)後遺症(後遺障害)概念の重要性

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ア 後遺症(後遺障害)とはなにか (ア)世間一般での後遺症概念  世間一般では,後遺症とは,急性期症状(事故直後から一定期間の強い症状)が治ゆした後も,なお残ってしまった機能障害や神経症状などの症状全般のことを指します。 (イ)交通事故事件でいう後遺症概念  しかし,世間一般でいわれている後遺症のすべてが,交通事故事件において後遺症(後遺障害)として認められるわけではありません。  世間一般でいわれている後遺症のうち,自賠法施行令別表第1及び別表第2に定める後遺障害等級表に該当するものだけが,交通事故事件でいう後遺症(後遺障害)として扱われるのです。 (ウ)交通事故事件でいう後遺症概念の詳細  交通事故事件でいう後遺症概念を詳しく説明すると,以下のようになります。  自賠法施行令2条1項2号では,後遺障害のことを「傷害が治ったとき身体に存する障害をいう」としか定義づけられていません。  ところで,交通事故事件における後遺障害の認定*15については,すべて労働者災害補償保険法における後遺障害の認定の方法がそのまま用いられています。  そして,労働者災害補償保険法における後遺障害の認定の現場では,「障害等級認定基準」(昭和50年9月30日付け基発第565号)が用いられています。  その「障害等級認定基準」においては,障害補償の対象となる障害について,以下の4要件をみたすものであることを求めています((財)労災サポートセンター『労災補償 障害認定必携』第14版67頁)。  (A)負傷または疾病がなおったときに残存するもので当該傷病と相当因果関係*16があること  (B)将来においても回復が困難と見込まれる精神的または身体的なき損*17状態であること  (C)その存在が医学的に認められること  (D)労働能力の喪失を伴うものであること  そして,この4要件を充たすとして後遺障害と認められるものが,自賠法施行令別表第1及び別表第2に定める後遺障害等級表に該当するものということになります。 イ 後遺障害等級  後遺障害と認められるものをあらわした「自賠法施行令別表第1及び別表第2」は,別添表のとおりです(平成18年4月1日以降発生した事故に適用する表を掲げています。)。 「自賠法施行令別表第1及び別表第2」 ※携帯電話からご覧になれない方は、お手数ですがパソコンよりご覧下さい。  なお,右端の欄の「保険金額」とは,自賠責保険における支払限度額を表します。  たとえば,自賠法施行令別表第2第1級に該当する後遺障害等級に認定された場合,自賠責保険の被害者請求により支払われる上限は3,000万円ということになります。  なお,被害者が亡くなられたときの支払限度額は3,000万円となっています。 ウ 後遺症(後遺障害)と認められない場合 (ア)非該当と判断される意味  自賠責保険の被害者請求において,自賠法施行令別表第1及び別表第2に定める後遺障害等級表に該当しない(非該当)と判断された場合は,交通事故事件においては,後遺症(後遺障害)がないと判断されることになります。  そのように判断されてしまうと,以下のようになります。 (イ)非該当と判断された場合でも認められる損害  非該当と判断された場合でも認められる損害には,次のようなものがあります。  a. 被害者の方に生じた積極損害(①治療関係費,②付添看護費,③入院雑費,④通院交通費・宿泊費等,⑤医師等への謝礼,⑥学生・生徒・幼児等の学習費,保育費,通学付添費等,⑦装具・器具等購入費,⑧家屋・自動車等改造費,調度品購入費,⑨帰国費用)  b.被害者の方に生じた消極損害のうち,⑩休業損害及び⑪傷害慰謝料(入通院慰謝料) (ウ)非該当と判断された場合には認められない損害  非該当と判断された場合には,被害者の方に生じた消極損害のうち,⑫後遺症による逸失利益及び⑬後遺症慰謝料については,まったく認められないことになってしまいます。  被害者に生じる可能性のあるもののうち,⑫後遺障害逸失利益及び⑬後遺障害慰謝料の金額の占める割合が大きいため,後遺症(後遺障害)がないと判断されてしまうと,ほとんど賠償を得られないことになってしまいます。 エ 後遺障害等級認定の実際 (ア)後遺障害等級認定を行う機関  後遺障害等級認定は,自賠責保険の被害者請求でも,自動車任意保険会社を介して行う事前認定でも,いずれも「損害保険料率算出団体に関する法律」に基づいて設立された損害保険料率算出機構(旧名称:自動車保険料率算定会)に属する自賠責損害調査センター自賠責損害調査事務所が行っています。 (イ)損害保険料率算出機構の公平性  損害保険料率算出機構は加盟損害保険会社の委託を受けています。  また,運用経費の大半は加盟損害保険会社から支出され,かつ損害保険会社のOBが多数雇用されているといわれているため,その後遺障害等級認定の公平性に疑問が残ります。 (ウ)損害保険料率算出機構による認定判断方法  後遺障害等級認定においては,医師の作成した(自動車損害賠償責任保険)後遺障害診断書とレントゲンやMRI等の画像のみに基づいて判断されているといわれています。 (エ)後遺障害等級認定判断の問題  後遺障害等級が認定されるかどうか,認定されたとして後遺障害等級のうち何級に該当するかということは交通事故事件において賠償額を定める上で非常に重要な事柄であるにもかかわらず,このような形で認定されているのです。 オ より高い後遺障害等級獲得のために (ア)後遺障害診断書への詳細な記載  後遺障害等級認定の判断に際しては,医師の作成した(自動車損害賠償責任保険)後遺障害診断書とレントゲンやMRI等の画像のみに基づいて判断される以上,まず対策として考えられるのは,被害者の方に生じている症状について,余すところなく医師に(自動車損害賠償責任保険)後遺障害診断書に記載してもらうことが,より高い後遺障害等級獲得のために不可欠な対策となります。 (イ)労災保険給付請求との併用  交通事故が業務中または通勤途中において発生したときは,被害者の方は,自賠責保険の被害者請求を行うだけでなく,労働者災害補償保険法に基づく労災保険給付請求を行うことができます。  労災保険給付に際しては,一般に,損害保険料率算出機構の行う等級認定よりも慎重に行われているといわれています。  なお,労災保険給付における後遺症当該等級認定に不満が残る場合には,労働者災害補償保険審査官に対する審査請求,労働保険審査会に対する再審査請求,処分の取消しの訴え(労働者災害補償保険法38条,40条)と不服申立手段が揃っています。 (ウ)異議申立ての活用  後遺障害等級認定がなされなかったり,認定された後遺障害等級に不満が残るときは,「後遺障害の認定等級に対する異議申立て」を行うこともできます。  この異議申立てにおいては,当初の等級認定よりは慎重に判断されているといわれています。  実際に,この異議申立てにより,当初の等級認定が覆って,はるかに高い後遺障害等級認定を獲得できる場合もあります。
*15 「交通事故事件における後遺障害の認定」  自賠法16条の3は,「保険会社は,保険金等を支払うときは,死亡,後遺障害及び傷害の別に国土交通大臣及び内閣総理大臣が定める支払基準(以下「支払基準」という。)に従つてこれを支払わなければならない。」と規定しています。  これを受けて定められた通達である「自動車損害賠償責任保険の保険金等及び自動車損害賠償責任共済の共済金等の支払基準」(平成13年12月21日付金融庁,国土交通省告示第1号/なお,自動車損害賠償責任保険の保険金等及び自動車損害賠償責任共済の共済金等の支払基準の一部を改正する告示が平成22年4月1日に施行されています。)においては,「第3 後遺障害による損害」の項において, 「後遺障害による損害は,逸失利益及び慰謝料等とし,自動車損害賠償保障法施行令第2条並びに別表第1及び別表第2に定める等級に該当する場合に認める。  等級の認定は,原則として労働者災害補償保険における障害の等級認定の基準に準じて行う。」 と記載されています。 *16 「相当因果関係」  相当因果関係とは,交通事故と因果関係のある損害のうち,賠償されなければならない範囲を表す用語です。  因果関係は,「あれなくばこれなし」というもので,交通事故が発生している以上,すべての損害は交通事故と因果関係があることになってしまいかねませんが(無限に広がってしまいかねない。),すべての損害のうち,相当と考えられる範囲ものだけに因果関係を限定するために,この「相当因果関係」という用語が用いられます。 *17 「き損」  き損とは,欠けてそこなわれることをいいます。

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