Q1 相続対策として,借金をしてまで土地建物を購入しておくべきでしょうか?
A (1)相続税は,遺産に対して課税されます。
相続税の計算に際しては,債務控除が認められています(相続税法13条)。
また,相続税の計算に際しては,土地については相続税路線価で,建物については固定資産評価額で計算されますが,相続税路線価にせよ固定資産評価額にせよ実勢価格よりかなり低額になることが多くなっています。
そのため,現金として遺産を遺すよりも,借金をして土地建物を購入すると,確かに相続税額を低く抑えることができます。
(2)しかし,借金をしてしまい,その借金の返済に生前の被相続人や相続人が苦労している事態はよく目にします。
(3)また,相続人が複数になる場合,土地建物は分割して売却するのに向きません。
さらに,借金については,被相続人の死亡(相続開始)と同時に共同相続人にその法定相続分に応じて当然に分割承継されることになっていて,相続人は,法定相続分に従った相続債務の履行を求められたときには,これに応じなければなりません(最判昭和34年6月19日民集13巻5号757頁参照)。
そのため,借金がある場合や遺産中に土地建物がある場合には遺産分割協議がまとまりにくくなるというのが実情です。
(4)他方,相続税には多額の基礎控除が認められていて課税遺産総額は実際の遺産額よりもかなり低額に抑えられる上,課税遺産総額がそれほど多額でない場合には相続税の税率もそれほど高率になるわけではありません(相続税の税率について詳しくは国税庁HP「相続税の税率」(
http://www.nta.go.jp/taxanswer/sozoku/4155.htm)をご覧下さい。)。
(5)これらのことからすると,相続税対策として,借金をしてまで土地建物を購入するというのが得策とは思われません。
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