相続・遺言

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第1 相続の基礎Q&A

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Q1 相続人と法定相続分はどのように決まっているのですか?
A (1)被相続人の子及び被相続人の配偶者は必ず法定相続人となります(民法887条1項,890条)。
 また,被相続人の子が亡くなっている場合でも,その子(被相続人の孫)が存命のような場合には,その者が法定相続人になります(代襲相続/民法887条2項・3項)。
 被相続人の子がおらず,その代襲相続人もいない場合には,被相続人の直系尊属のうち,親等の近い者(被相続人の両親),その者もいないときには被相続人の兄弟姉妹またはこれらの者の代襲相続人も相続人になります(民法889条)。
(2)では,法定相続分はどうなっているでしょうか?
 民法900条では,次のように規定されています。
 同順位の相続人が数人あるときは,その相続分は,次の各号の定めるところによる。
  • 1. 子及び配偶者が相続人であるときは,子の相続分及び配偶者の相続分は,各2分の1とする。
  • 2. 配偶者及び直系尊属が相続人であるときは,配偶者の相続分は,3分の2とし,直系尊属の相続分は,3分の1とする。
  • 3. 配偶者及び兄弟姉妹が相続人であるときは,配偶者の相続分は,4分の3とし,兄弟姉妹の相続分は,4分の1とする。
  • 4. 子,直系尊属又は兄弟姉妹が数人あるときは,各自の相続分は,相等しいものとする。ただし,嫡出でない子の相続分は,嫡出である子の相続分の2分の1とし,父母の一方のみを同じくする兄弟姉妹の相続分は,父母の双方を同じくする兄弟姉妹の相続分の2分の1とする。
(3)たとえば,被相続人(夫)に,妻,長男,二男がいる場合には,夫の両親が存命であったとしても,妻1/2,長男1/2,二男1/2となります。
 被相続人(夫)に,妻,夫の両親がいる場合には,妻2/3,夫の父1/6,夫の母1/6となります。
 被相続人(夫)に,妻,夫の兄(父母の一方のみを同じくする半血兄弟姉妹),夫の弟(父母の双方を同じくする全血兄弟姉妹)がいる場合には,妻3/4,夫の兄1/12,夫の弟1/6となります。
(4)被相続人(夫)に,妻と長男(非嫡出子)と二男(嫡出子)がいる場合で,既に長男は死亡し,その長男には妻と長男(被相続人の孫)がいるときには,長男の妻には代襲相続をする権利はなく,代襲相続をする者は本来の法定相続人と同じ法定相続分を有するので(民法901条),妻1/2,長男の長男(被相続人の孫)1/6,二男1/3となります。
Q2 法定相続分は昔から変わっていないのでしょうか?
A (1)曾祖父,祖父といった方の遺産について遺産分割協議がなされておらず,土地の所有名義人が曾祖父,祖父の代から変わっていないということがあります。
 このような場合に,その土地に居住している方が,その土地を売却したいと考え,遺産分割を行う必要があることがあります。
(2)このような場合,昭和55年より以前の法定相続分は現在と異なっていることに注意する必要があります。
(3)現在の民法の法定相続分は,昭和56年1月1日以後,被相続人が死亡(相続が開始)した場合に適用されます。それより前に亡くなった方の相続については,現在の法定相続分とは異なる相続分になります。
 昭和23年1月1日から昭和55年12月31日までの間に被相続人が死亡(相続が開始)した場合には,次のとおりとなります。
  •   相続人が子と配偶者の場合・・・・・・配偶者1/3,子2/3
  •   相続人が直系尊属と配偶者の場合・・・配偶者1/2,直系尊属1/2
  •   相続人が兄弟姉妹と配偶者の場合・・・配偶者2/3,兄弟姉妹1/3
(4)また,昭和22年12月31日までの間は,旧民法に従い,家督相続した者がすべて相続することになっていました。
(5)古い時代の相続が問題となる場合には,このような法改正前の知識が必要となることもあります。
Q3 相続人調査はどのようにすればよいのですか?
A (1)遺産分割を行うにも,預貯金を解約(引出)するにも,被相続人の相続人が誰であるかを確定するための戸籍謄本等を提出する必要があります。
(2)その調査(相続人調査)にあたっては,被相続人の出生にまでさかのぼって(場合によってはそれ以前にまでさかのぼる必要があります。)戸籍謄本等を収集し,またその戸籍と現在の相続人の戸籍とが間断なくつながるように戸籍謄本等を収集する必要があります。
(3)戸籍謄本等を間違いなく収集するには,戸籍謄本の電算化のための平成の法改正や大家族が戸籍に載っていた時代から核家族のみに限定する戸籍となった昭和の法改正等も押さえておく必要があり,一般の方ではなかなか大変ですが,遺産分割等の手続を弁護士に依頼されれば,弁護士において収集することが可能です。
Q4 被相続人の遺した借金(債務)はどうなるのですか?
A (1)被相続人の残した借金(債務)については,相続放棄または限定承認をしない限り,被相続人の死亡(相続開始)と同時に共同相続人にその法定相続分に応じて当然に分割承継されることになっています。
 そのため,相続人は,法定相続分に従った相続債務の履行を求められたときには,これに応じなければなりません(最判昭和34年6月19日民集13巻5号757頁参照)。
(2)仮に,被相続人が相続人の1人に積極財産,消極財産(借金,債務)のすべてを相続させる旨の遺言をした場合,相続人間においては,その相続人が相続債務をすべて承継することになるとしても,相続債務の債権者の関与なくなされたものであるため,相続債権者に対してはその効力が及ばず,各相続人は,相続債権者から法定相続分に従った相続債務の履行を求められたときには,これに応じなければなりません(最判平成21年3月24日民集63巻3号427頁参照)。
(3)また,被相続人の遺産について分割協議をし,相続人の1名に積極財産,消極財産のすべてを取得させるということにしたとしても,他の相続人は,この遺産分割を理由に,法定相続分に従った相続債務の履行を拒むことはできません(東京高判昭和37年4月13日家裁月報14巻11号115頁参照)。
(4)したがって,限定承認または相続放棄をしない限り,相続人が借金(債務)を支払う義務を免れることはできません。
Q5 被相続人の遺した積極財産と消極財産の金額がよくわからない場合にはどうしたらよいのでしょうか?
A (1)相続には,単純承認,限定承認,相続放棄の3つの種類があり,相続人は,被相続人の死亡(相続の開始)を知った時から3か月以内に,そのいずれかを選択する必要があります(民法915条1項本文)。
(2)このうち,単純承認とは,相続人が,被相続人の権利義務を全面的に承継するものをいいます(民法920条)。
(3)限定承認とは,相続人において,相続によって得た積極財産の限度でのみ被相続人の債務等を負担するという留保付で相続を承認するものです(民法922条)。
 限定承認は,相続人が数人以上いるときには共同相続人の全員の共同でなければすることができないという難点があります(民法923条)。
(4)相続放棄とは,全面的に遺産の承継を拒否する手続です(民法939条)。
(5)被相続人の遺した積極財産と消極財産の金額がよくわからない場合には,単純承認をしてしまうと相続をすることにより損をしてしまう可能性があり,他方,相続放棄をしてしまうと,相続したほうが得だったという可能性があるので,共同相続人全員の同意が得られるのであれば,限定承認をするのがよいということになるでしょう。
(6)もっとも,他の共同相続人の協力が得られず,限定承認ができないような場合でも,しばらく調査すれば被相続人の遺した積極財産と消極財産の金額が判明しそうな場合には,家庭裁判所において,相続すべきかどうか考える期間の伸長を求めることもできます(民法915条1項但書)。
Q6 被相続人の死亡から3か月以上経っていた場合には相続放棄はできないのでしょうか?
A (1)被相続人の死亡の事実自体を知らなかったときや,被相続人の死亡の事実自体は知っていたものの被相続人には債務などないと思っていたのに,被相続人の死亡から3か月以上経ってから,相続人に対して債務の支払を求める督促状が届くような場合もあります。
(2)このような場合であっても,相続人は,被相続人の死亡(相続の開始)を知った時から3か月以内に相続放棄をすることが認められているので,「知った時から3か月以内」といえる場合であれば,家庭裁判所に対して相続放棄申述受理申立てを行い,認めてもらうことができることもあります。
 そして,家庭裁判所は,相続放棄の申述を却下すべきことが明らかな場合を除き,受理すべきとされていることがから(東京高決平成22年8月10日家裁月報63巻4号129頁参照),相続放棄の申述を受理してもらうことはそれほど難しいことではありません。
(3)もっとも,「知った時」とは,相続人が相続財産の全部もしくは一部の存在を認識した時または通常これを認識しうべかりし時(最判昭和59年4月27日民集38巻6号698頁)ときわめて限定されており,仮に相続放棄の申述を受理してもらっている場合であっても,債権者から「知った時」から既に3か月以上経過していると主張された場合,敗訴する(債務の支払いを拒めない)可能性はあり得ます。
 したがって,被相続人の死亡から3か月以上経つ前に相続放棄の申述受理申立てを行うのが無難であることは間違いありません。

第2 遺産分割Q&A

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Q1 遺産分割はなぜ必要なのでしょうか?
A 遺言書が作成されていない場合には,原則として,被相続人の遺産は共同相続人間で相続分どおり均等に分配することになります。
 しかし,被相続人(夫)の相続人が母,長男,二男だった場合で,被相続人の財産中に自宅の土地建物があったような場合,遺産分割協議をしないといつまでも自宅の土地建物は母,長男,二男の共有のままとなってしまい,孫の代まで共有が続くということにもなりかねません。
 また,被相続人名義の預貯金の解約(引出)についても,遺産分割協議を減るとスムーズに行うことができます。
そのほかにも遺産分割を経ないと解決できない問題もありますし,被相続人の遺した遺産が多額に及んで相続税の申告・納付が必要な場合には,遺産分割協議が完了してあれば,「配偶者の税額軽減」,「小規模宅地等の評価減」の利益を受けることができるなど,遺産分割を経ることによるメリットもあります。
 そのため,遺産分割が必要になるのです。
Q2 被相続人名義の預貯金を解約(引出)をするにはどうしたらいいのでしょうか?
A 被相続人名義の預貯金を解約(引出)するには,被相続人の相続人が誰であるかわかるように全部事項証明書等(戸籍謄本,除籍謄本,改製原戸籍謄本等)を揃えることがまず必要になります。
 その上で,被相続人名義の預貯金を解約(引出)する方法としては,以下の方法があります。
(1)遺言執行として行う方法
 被相続人が有効な遺言書を作成している場合,その遺言書で遺言執行者が指定されている場合や,遺言執行者が指定されていなくても家庭裁判所に対して遺言執行者の指定の申立てを行って遺言執行者が指定された場合には,その遺言執行者が被相続人名義の預貯金を解約(引出)することができます。
 もっとも,この方法は,遺言が作成されていない場合には用いることができないという難点があります。
(2)共同相続人全員の同意に基づいて相続人代表者を定める方法
 共同相続人全員が相続人代表者を定めて,金融機関の指定する用紙に共同相続人全員がサイン(署名・捺印)して,共同相続人全員の印鑑証明書を添えた上で,金融機関に提出するというものです。
 この際,遺産分割協議書を作成済みの場合には,それを添付することになっています。
 もっとも,この方法では,遺産分割協議がまとまらないと共同相続人全員の同意が得られにくいという難点があります。
(3)遺産分割調停を経る方法
 2つめの方法として,家庭裁判所で行われた遺産分割調停の結果を記した調停調書を持参する方法があります。
 遺産分割調停がまとまりさえすれば,その調停によって預貯金を取得できることになった相続人が,他の共同相続人の同意書等を要することなく解約ができるというメリットがありますが,裁判所で行う遺産分割調停でもまとまらない場合には用いることができないという難点があります。
(4)預金払戻請求訴訟による方法
 どうしても共同相続人間の話し合いでは解決できない場合,金融機関に対して預金払戻請求訴訟を提起するという方法があります。
 相続人からの訴訟提起に対しては当該金融機関が他の共同相続人に対して訴訟告知という手段をとることが多いこともあって,この訴訟提起という方法は手間がかかるのが難点ですが,最終的にはこの方法により解約(引出)することが可能です。
Q3 遺産分割は,相続税申告納付期限までにしなければならないのでしょうか?
A (1)相続税の対象となる課税遺産総額は,次のようにして計算されます(相続税法15条)。
   課税価格の合計額-基礎控除額(5,000万円+1,000万円×法定相続人の数)=課税遺産総額
 例えば,法定相続人の数が4人の場合には,基礎控除額が5,000万円+1,000万円×4名で9,000万円となるので,被相続人の遺産がこの金額を上回らなければ相続税の心配をする必要はないということになります。
 なお,相続税の計算について詳しくは,国税庁HP「相続税の計算」(http://www.nta.go.jp/taxanswer/sozoku/4152.htm)をご覧下さい。
(2)課税遺産総額がプラスとなる場合,先の例で言えば被相続人の遺産が9,000万円を超えるようなときには,相続税の申告納付を行う必要があります。
 そして,その申告納付は,その相続の開始があったことを知った日の翌日から10か月以内に行う必要があります(相続税法27条,33条)。
(3)しかし,遺産分割は,この期限内に終わらせておかなければならないものではありません。
 遺産分割未了の場合には,遺産分割未了として,相続税の申告納付を行えばよいからです。
 ただし,相続税の申告納付期限までに遺産分割が完了した場合には以下のようなメリットがあります。
(4)相続税の申告納付期限までに遺産分割が完了した場合,相続税の納付額に関し,「配偶者の税額の軽減」と「相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)」のメリットを享受できることがあります。
 「配偶者の税額の軽減」とは,被相続人の配偶者が遺産分割や遺贈により実際に取得した正味の遺産額が,1億6,000万円と配偶者の法定相続分相当額のどちらか多い金額までは配偶者に相続税はかからないという制度(相続税法19条の2)で,その詳細は国税庁HP「配偶者の税額の軽減」(http://www.nta.go.jp/taxanswer/sozoku/4158.htm)をご覧下さい。
 「相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)」個人が,相続又は遺贈により取得した財産のうち,その相続の開始の直前において被相続人等の事業の用に供されていた宅地等又は被相続人等の居住の用に供されていた宅地等のうち,一定の選択をしたもので限度面積までの部分(小規模宅地等)については,相続税の課税価格に算入すべき価額の計算上,一定の割合を減額するという特例(租税特別措置法69条の4,同法施行令40条の2)で,その詳細は国税庁HP「相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)」(http://www.nta.go.jp/taxanswer/sozoku/4124.htm)をご覧下さい。
(5)その意味では,相続税の申告納付までに遺産分割が完了することに一定のメリットがあるのですが,他方で,相続税の申告納付の際に遺産分割未了の場合であっても,申告納付期限から3年以内に遺産分割が完了すれば上記特例のメリットをいずれも享受することができます(相続税法19条の2第2項,租税特別措置法69条の4第4項)。
(6)ですから,相続税の申告納付までに終わらせたいと焦って納得できない遺産分割協議を行うよりは,3年以内に終わらせられればメリットを享受できると開き直って,納得できるまで遺産分割協議を行ったほうがよいといえるでしょう。
Q4 遺産分割はどのように行えばいいのでしょうか?
A (1)共同相続人間での任意の話し合いにより解決できる場合には,共同相続人全員に遺産分割協議書にサイン(署名・捺印)してもらえれば遺産分割は成立します。
 ただし,不動産の登記手続や金融機関における預貯金の解約(引出)等が必要な場合には,共同相続人全員に捺印の際に実印を押印してもらい,印鑑証明書を添付する必要があります。
(2)共同相続人全員の任意での話し合いでは解決できないような場合,遺産分割は乙類家事審判事項となっているので(家事審判法9条1項乙類10号),家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てて,調停委員という中立な立場の方を交えた話し合いの場で解決することができます。
 なお,家事審判事項とは,家庭に関する事柄のうち,家庭裁判所が審判をすることと定められている事項をいい,甲類と乙類に分類されます。  甲類審判事項とは,家事調停の対象となり得ないもので,成年後見・保佐・補助開始, 不在者財産管理人・相続財産管理人選任,失踪宣告,子の氏の変更,養子縁組許可,親権喪失・辞任,相続放棄,遺言書検認,遺言執行者選任,戸籍の氏・名の変更,里親,保護施設収容等の事件があります。
 他方,乙類審判事項とは,夫婦同居,夫婦協力扶助,婚姻費用分担,財産分与,年金分割,親権者の指定・変更,子の監護者,子の監護に関する処分(養育費,面会交流),子の引渡し,扶養,推定相続人の廃除・取消し,遺産分割,祭祀承継者の指定,寄与分を定める申立て等があります。  乙類審判事項については,調停を先に行わなければならないという規定は定められていないのですが,できる限り調停による解決を図るべきとされており,審判を申し立ててもいつでも調停に付すことができることになっているため(家事審判法11条),審判ではなく調停を申してるのが通常となっています。
(3)遺産分割調停が不成立となってしまった場合には,自動的に審判手続に移行し,担当裁判官が審判書を作成することになり,それにより遺産分割が解決することとなります(ただし,それに対する不服申立てがなされると事件の解決が長引きます。)。
(4)遺産分割調停でまとまらない場合には自動的に審判に移行し,裁判官が判断することになるため,弁護士が関与するような紛争性が高い案件であっても,調停段階でまとまることが多いというのを実感します。
Q5 遺産の範囲に争いがある場合にも遺産分割はできるのでしょうか?
A (1)遺産分割をしようとする場合に,ある財産がそもそも遺産に含まれるのかどうかが問題となるケースがあります。  このような問題は,遺産分割の前提となる事項とされているのですが,遺産分割の前提となる事項についても,遺産分割調停で決めることができ,また審判によって裁判所が判断することもできます(最判昭和41年3月2日民集20巻3号360頁参照)。
(2)もっとも,上記最判は,他方で,遺産分割の前提となる事項について,その存否を終局的に確定するには,訴訟事項として対審公開の判決手続によらなければならないとしているので,遺産分割調停や審判が成立しても,その前提事項がおかしいとして,後から前提事項を争われる可能性があります。
(3)そのため,遺産分割調停の前提事項である遺産の範囲について後から争われる可能性がある場合には,遺産の範囲の確認を求めて,遺産の範囲をあらかじめ確定する訴訟を提起する必要があるときもあります。

第3 相続対策・遺言・遺留分Q&A

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Q1 相続対策として,借金をしてまで土地建物を購入しておくべきでしょうか?
A (1)相続税は,遺産に対して課税されます。
 相続税の計算に際しては,債務控除が認められています(相続税法13条)。
また,相続税の計算に際しては,土地については相続税路線価で,建物については固定資産評価額で計算されますが,相続税路線価にせよ固定資産評価額にせよ実勢価格よりかなり低額になることが多くなっています。
 そのため,現金として遺産を遺すよりも,借金をして土地建物を購入すると,確かに相続税額を低く抑えることができます。
(2)しかし,借金をしてしまい,その借金の返済に生前の被相続人や相続人が苦労している事態はよく目にします。
(3)また,相続人が複数になる場合,土地建物は分割して売却するのに向きません。
 さらに,借金については,被相続人の死亡(相続開始)と同時に共同相続人にその法定相続分に応じて当然に分割承継されることになっていて,相続人は,法定相続分に従った相続債務の履行を求められたときには,これに応じなければなりません(最判昭和34年6月19日民集13巻5号757頁参照)。
 そのため,借金がある場合や遺産中に土地建物がある場合には遺産分割協議がまとまりにくくなるというのが実情です。
(4)他方,相続税には多額の基礎控除が認められていて課税遺産総額は実際の遺産額よりもかなり低額に抑えられる上,課税遺産総額がそれほど多額でない場合には相続税の税率もそれほど高率になるわけではありません(相続税の税率について詳しくは国税庁HP「相続税の税率」(http://www.nta.go.jp/taxanswer/sozoku/4155.htm)をご覧下さい。)。
(5)これらのことからすると,相続税対策として,借金をしてまで土地建物を購入するというのが得策とは思われません。
Q2 遺言書は作成しておくべきでしょうか?
A (1)遺言者が特定の相続人等に法定相続分を超える財産を残そうと思った場合には,その相続人等に対して生前にあらかじめ贈与しておくか,自分が亡くなったときに贈与するという意思表示をしておくか,遺言書を作成するしか方法がありません。
 このうち,生前に贈与して生前にお金に困ったらなんにもならないので,現実的には,遺言書を作成するという方法によらなければならないということになるでしょう。
 また,仮に法定相続分どおりに相続させたい場合であっても,寄与分,特別受益等の主張がなされて遺産分割協議がまとまらないということもよくあります。
 そのため,できる限り遺言書を作成すべきということになるでしょう。
(2)遺言書作成の方式には,緊急時を除き,自筆証書遺言,公正証書遺言,秘密証書遺言の3つが認められています(民法967条以下)。
(3)自筆証書遺言の場合,一部ワープロで書いてしまっているとか,作成日時を書き忘れたとか,印鑑をどこにも押印していなかったとかいった理由で無効になってしまいますので,多少費用がかさみますが,後の紛争を防止するという意味では,公証人の立ち会いの下で作成する公正証書遺言によるのをお勧めいたします。
Q3 遺言書において,遺言執行者を定めておくべきでしょうか?
A (1)遺言執行者が必要的(遺言執行者がいないと執行できない)遺言事項としては,身分上に関する遺言事項のうちの認知と,相続に関する遺言事項のうち推定相続人の廃除・取消しがあります。
 これらを遺言によって行うときには,遺言執行者を指定しておいたほうがよいでしょう。
(2)また,遺言執行者がいるときは遺言執行者により執行されるものとして,以下のものがあります。
  • ①相続に関する遺言事項のうち,法定相続分を超える相続分を超える相続分の指定及び特定の遺産を特定の相続人に「相続させる」旨の遺言
  • ②相続財産の処分に関する遺言事項のうち遺贈,財団法人設立のための寄附行為,信託の設定
  • ③祖先の祭祀主宰者の指定,生命保険金の受取人の指定・変更
 これらを遺言によって行うときにも,遺言執行者を指定しておいたほうがよいでしょう。
(3)そして,実務上,遺言執行者を指定しておくと便宜だともっとも実感するのは,預貯金の解約(引出)の場面です。
 ある特定の相続人に対して遺産のすべてを相続させるという遺言がなされている場合であっても,遺言執行者がいないときには,金融機関は,その相続人が単独で被相続人名義の預貯金の解約(引出)するのには応じないことがほとんどです。
 しかし,遺言執行者が指定されていれば,その遺言執行者が単独で被相続人名義の預貯金を解約(引出)することが可能です。
 そのため,被相続人名義の預貯金がある場合には,遺言執行者を指定しておいたほうがよいでしょう。
(4)なお,信託銀行が遺言執行者のような役目を担う遺言信託の制度もありますが,信託銀行は共同相続人の1名でも信託銀行が遺言執行者として遺言執行を行うことに反対すると遺言執行者としての就職を承諾しないようですので,遺言の内容に不満を持つ相続人が出そうなケースではお勧めしづらいところです。
Q4 遺言書に遺言執行者が指定されていない場合にはどうしたらいいのでしょうか?
A (1)身分上に関する遺言事項のうちの認知と,相続に関する遺言事項のうち推定相続人の廃除・取消しが遺言事項に含まれている場合で,その遺言内容を執行するためには,遺言執行者を選任する必要があります。
(2)また,ある特定の相続人に対して遺産のすべてを相続させるという遺言がなされている場合で,被相続人名義の預貯金を解約(引出)しようとしても,遺言書の内容に不満を持つ他の相続人は,その解約(引出)手続に協力してくれない可能性が高いでしょう。
 このような場合であっても,遺言執行者が選任されれば,遺言執行者が単独で預貯金を解約(引出)することができます。
(3)そして,遺言書中では遺言執行者が指定されていない場合には,家庭裁判所に対して遺言執行者の選任を申し立てて,遺言執行者を選任してもらうことが可能です。
Q5 遺留分を侵害する内容の遺言をしてもいいのでしょうか?
A (1)民法1028条は,「兄弟姉妹以外の相続人は,遺留分として,次の各号に掲げる区分に応じてそれぞれ当該各号に定める割合に相当する額を受ける。」として, 直系尊属のみが相続人である場合には被相続人の財産の3分の1,それ以外の場合には被相続人の財産の2分の1を遺留分として定めています。
(2)遺言者(被相続人/夫)の相続人が妻,長男,二男である場合に,遺言者が長男に遺産のすべてを相続させるといった遺言をしたとすると,妻及び事案は本来の法定相続分の1/2について,遺留分減殺請求(民法1031条以下)を行うことができ,妻は遺産の1/4,二男は遺産の1/8を確保することができます。
(3)遺留分を侵害する内容の遺言書を作成した場合でも,その遺言書の内容が無効となるわけではありませんが,このようなリスクがあることから,被相続人が亡くなった後の紛争予防という見地からは,なるべく遺留分を侵害する内容の遺言書作成は行わないほうが無難だといえるでしょう。
Q6 特定の相続人に対して多くの遺産を分配するという遺言書の内容に納得できない場合,どうすればいいのでしょうか?
A (1)遺言書は,一部ワープロで書いてしまっているとか,作成日時を書き忘れたとか,印鑑をどこにも押印していなかったとかいった理由で無効になってしまうなど,形式面で厳しい制約がありますので,とりわけ自筆証書遺言の場合,遺言書が有効かどうかチェックすることが求められます。
(2)遺言書が形式的には有効な場合でも,その遺言書作成当時,遺言者に意思能力があったかについて争うことができるときもあります。
(3)これらの点に問題がない場合でも,遺留分を侵害する内容の遺言書が作成されているときには,遺留分減殺請求(民法1031条以下)を行うことが可能です。
 ただし,相続人が遺言者(被相続人)の兄弟姉妹であるときには,その相続人は遺留分がないためこの主張ができないことには注意が必要です(民法1031条)。

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