時効をめぐる問題についての最高裁平成23年4月22日判決 1

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2011.4.23
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時効をめぐる問題についての最高裁平成23年4月22日判決 1

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 破綻直前の会社等が,その事実をあえて黙って顧客から出資金等を募るということはよくあります。
 このような破綻直前の会社等の行為は,不法行為(民法709条)を構成し,顧客は,その会社等に対して損害賠償請求ができます。
 しかし,不法行為に基づく請求は「被害者又はその法定代理人が『損害及び加害者を知った時から』3年間行使しないときは,時効によって消滅する。」とされています(民法724条)。
 そのため,顧客が上記のような会社の責任を追及しようと思ったときには,時効にかかってしまう可能性があります。

 このような場合に時効にかかるのを防ぐ法的構成として,次のようなものが考えられています。
① 上記時効期間の起算点である「損害及び加害者を知った時」の解釈により,時効の起算点を遅らせる方法
② 不法行為責任ではなく,時効期間が10年の債務不履行責任を追及する方法


 しかし,今般,2件の最高裁判決により,この2つの方法に限界があることが明らかになりましたので,その判決を紹介します。
 1つめは,①の論点について,「信用協同組合が自らの経営破綻の危険を説明すべき義務に違反して出資の勧誘をしたことを理由とする出資者の信用協同組合に対する不法行為による損害賠償請求権の消滅時効が,遅くとも同種の集団訴訟が提起された時点から進行するとされた事例」についての,最高裁平成23年4月22日第二小法廷判決です。
 判決の全文については, 「最高裁平成23年4月22日第二小法廷判決(平成21(受)131)」 をご参照ください。

 上記最高裁判決は,次のように述べています。
「(1) 民法724条にいう「損害及び加害者を知った時」とは,被害者において,加害者に対する賠償請求をすることが事実上可能な状況の下に,それが可能な程度に損害及び加害者を知った時を意味すると解するのが相当である(最高裁昭和45年(オ)第628号同48年11月16日第二小法廷判決・民集27巻10号1374頁参照)。

(2) 前記事実関係によれば,まず,被上告人は,本件処分がされた平成12年12月頃には,上告人が本件処分を受けてその経営が破綻したことを知ったというのであるから,その頃,上告人の勧誘に応じて本件出資をした結果,損害を被ったという事実を認識したといえる。さらに,
① 被上告人が平成12年3月に本件出資をしてから本件処分までの期間は9か月に満たなかったことや,
② 本件処分当日に発表された金融再生委員会委員長の談話や平成13年3月12日に発表された上告人の金融整理管財人の報告書において,平成11年に行われた監督官庁の検査の結果,上告人は,既に債務超過と見込まれ,自己資本充実策の報告を求められていたにもかかわらず,その後も適切な改善策を示すことなく,不良債権の整理回収とはならない表面的な先送りを続けていたなどの事情が明らかにされていたことに加え,
③ 平成13年6月頃以降,被上告人と同様の立場にある出資者らにより,本件各先行訴訟が逐次提起され,同年中には集団訴訟も提起されたというのであるから,上告人が実質的な債務超過の状態にありながら,経営破綻の現実的な危険があることを説明しないまま上記の勧誘をしたことが違法であると判断するに足りる事実についても,被上告人は,遅くとも同年末には認識したものとみるのが相当である。
 上記時点においては,被上告人が上記の勧誘が行われた当時の上告人の代表理事らの具体的認識に関する証拠となる資料を現実には得ていなかったとしても,上記の判断は何ら左右されない。

 そうすると,本件の主位的請求に係る不法行為による損害賠償請求権の消滅時効は,遅くとも平成13年末から進行するというべきであり
,本件訴訟提起時には,上記損害賠償請求権について3年の消滅時効期間が経過していたことが明らかである。」

 

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