家事調停の家事審判への移行を認める最高裁平成23年7月27日決定

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2011.8.22
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家事調停の家事審判への移行を認める最高裁平成23年7月27日決定

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  家事審判の対象となる事項(家事審判事項)は,民法その他の法律で定められています。
 民法上に定められている事項については,家事調停の対象となり得るかどうかで,甲類乙類とに分類されています(家事審判法9条1項)。
 甲類とは,国家の後見的作用として,重要な身分行為の許可,認証,または権利義務の付与もしくははく奪に関するもので,対立する当事者が存在しないため,家事調停の対象とはなり得ません。
 甲類には,後見開始の審判(家事調停法9条1項甲類1号)などが含まれます。
 
 他方,乙類とは,原則として,第一時的に当事者の協議による解決が期待される事項で,審判によっても調停によっても処理することできます。
 乙類には,婚姻費用の分担(家事調停法9条1項乙類3号),財産分与(同5号),遺産分割(同10号)などが含まれます。

 乙類審判事件については,法律上は,家庭に関する訴訟事件と異なり調停前置主義(調停を行うことができる事件について訴えを提起しようとする者は,まず家庭裁判所に調停の申立てをしなければならないとするもの/家事審判法18条1項)はとられていません。
 しかし,乙類審判事件についても当事者の協議によって解決することが期待されているので,できる限り,調停による解決が図られるべきものとされ,乙類審判事件について審判の申立てがなされた場合,いつでも調停に付することができることになっています(家事審判法11条)。
 そのため,当事者としては,通常,乙類審判事件についても,調停を申し立てることになっています。

 乙類審判事件について調停が不成立に終わった場合には,当然に審判手続に移行し,調停の申立時に,審判の申立てがあったものとみなされます(家事審判法26条1項)。

 ところが,調停においては一つの申立てで複数の事項の解決を求めることができるため,一つの申立てで複数の事項の解決を求めていて,その複数の事項のうちに乙類審判事件とそうでないものが含まれている場合に,乙類審判事件について当然に審判に移行するかどうかというのは,はっきりしない面があったといえます。

 このようなケースにおいて, 「調停不成立のときに審判への移行を求める意思を有していないなど特段の事情がない限り乙類審判事件について当然に審判に移行するとする最高裁決定が下されておりますので,ご紹介いたします。

 決定の全文については,「審判期日を指定しないことに対する抗告却下決定に対する特別抗告事件についての最高裁平成23年7月27日決定」 をご覧ください。

 上記最高裁決定では,次のように述べています。
「抗告人が東京家庭裁判所立川支部に申し立てた調停事件(同裁判所同支部平成21年(家イ)第2368号)のうち財産分与及び年金分割を求める部分は,家事審判法9条1項乙類に掲げる事項に該当し,又は同事項とみなされるのであって,同事項に該当しない他の家庭に関する事項と併せて調停の申立てがされた場合であっても,抗告人が調停不成立のときに審判への移行を求める意思を有していないなど特段の事情がない限り,その事件名にかかわらず,家事審判法26条1項に基づいて審判に移行するものと解される」。

 そして,調停において財産分与や年金分割の解決を求めた側は,話し合い(調停)で解決できないのであれば裁判所に(審判で)決めてほしいと考えるでしょうから,上記決定のいう「特段の事情」があると認められる場合というのはちょっと考えられません。

 上記決定は,当然といえば当然の判断だということができるでしょう。
 もっとも,調停においては一つの申立てで複数の事項の解決を求めることができるため,一つの申立てで複数の事項の解決を求めていて,その複数の事項のうちに乙類審判事件とそうでないものが含まれている場合に,乙類審判事件について,調停不成立のときに審判への移行を求める意志を有していないといったきわめて例外的な事情があるとき以外には当然に審判に移行することがはっきりしたという点で,意味のある決定だと思われます。

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