過払金返還債務の承継 1

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2011.10.1
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過払金返還債務の承継 1

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  従前,プロミス㈱,アコム㈱等の消費者金融会社(サラリーマン金融,サラ金などとも呼ばれることがあります。)や三菱UFJニコス㈱(旧:日本信販),㈱オリエントコーポレーション等の信販会社が顧客に対して金員を貸し付ける際の金利は,利息制限法所定の利率よりも遥かに高金利でした。
 しかし,民事上,利息制限法所定の利率を上回る金利を消費者金融会社等が収受することは許されず,それを上回る金利の収受分はすべて貸金元金に充当されるべきものです。
 そのため,それら消費者金融会社や信販会社との間で,おおむね7年以上,取引を継続した顧客は,当該消費者金融会社等に対して過払金の返還を請求することができることになります。

 なお,過払金発生の原理の詳細については,「事例説明」中「個人の債務整理(9)過払金回収手続」中「ウ 過払金回収手続の概要」をご覧下さい。

 この過払金返還請求については,従前は,返還を求める金額が比較的少額の場合には,任意交渉だけで満額に近い金額の返還を受けることができることが多かったのですが,最近は消費者金融会社等の経営悪化に伴い,任意交渉で満額に近い支払いに応じることはほとんどなくなっております。
 また,訴訟提起した場合でもすぐには解決出来ない上,支払期日も相当先になるということも多くなっています。
 そればかりか,従前は消費者金融会社等が争点としていなかった問題まで争点となって,徹底抗戦されるということも増えています。

 このように徹底抗戦されることが増えている論点として,債権譲渡がなされた場合に過払金返還債務を承継するか否か,というものがあります。

 この過払金返還債務の承継をめぐっては,当ブログ(「過払金返還債務の承継に関する最高裁平成23年3月22日判決」)においても触れたことがありますが,最高裁判決が出そろいいつつあるので,改めて整理したいと思います。

 たとえば,マルフク㈱という会社は,従前はNTTの電話加入権を担保にして貸付を行うことで有名な会社でしたが,マルフク㈱は,平成14年5月,顧客に対する貸金債権や営業基盤の大部分をディック㈱に譲渡しました。
 なお,ディック㈱は,その後,アイク㈱等と合併しCFJ㈱に商号変更した後,現在はCFJ合同会社という名称になっています。
 マルフク㈱との間で,長年,金銭消費貸借取引(お金の貸し付けと返済)を継続してきた顧客(消費者)は,貸付債権がディックに譲渡される前の段階で,マルフク㈱に対して過払金の返還を請求することのできる地位にあったのです。
 しかし,それを知らされることなくディック(その後のCFJ)と取引を継続し,CFJに対して,マルフク㈱との取引において発生した過払金返還債務をCFJが承継したとして,マルフク㈱との取引の分まで含めて過払金の返還を求めることができるかというのが大きな争点となったのです。

 最近では,以下の4つが大きく争われていました。
① マルフク㈱からディック㈱に債権譲渡された事案
② タイヘイ㈱からディック㈱に債権譲渡された事案
③ ㈱クオークローン(㈱タンポート/㈱クラヴィス)からプロミス㈱に債権譲渡された事案
④ アエル㈱からJPモルガンやエヌシーキャピタル等に債権譲渡された事案


 消費者金融会社等においては,大きな会社が小さい会社を吸収合併等をしたり,小さい会社が有している顧客の債権や営業基盤を譲り受けたりすることで成長を続けただけでなく,最近は,過払金返還債務を切り離すことを目的として債権譲渡等が用いられることもあります。
 そのため,消費者金融会社業界においては合従・連衡等が非常に多くなっています。
 このような業界の特殊性もあり,過払金返還債務の承継という問題は頻繁に起こっています。

 しかも,債権譲渡した側(マルフク㈱,㈱クラヴィス等)については,貸付債権や営業基盤の大部分を譲渡してしまっているので,マルフク㈱等に対して過払金返還請求訴訟を提起したところで回収の見込みが立ちません。

 この過払金返還債務の承継という問題について,上記①~③については最高裁判決が出そろいました(2に続く)。

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