過払金返還債務の承継 2

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2011.10.2
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過払金返還債務の承継 2

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 過払金返還債務の承継をめぐる問題については,「過払金返還債務の承継 1」に記載したとおりです。
 
① マルフク㈱からディック㈱に債権譲渡された事案
 上記「過払金返還債務の承継 1」における「① マルフク㈱からディック㈱に債権譲渡された事案」においては,平成23年7月7日最高裁第一小法廷判決,平成23年7月8日最高裁第二小法廷判決が出ております。
 この両判決は,② タイヘイ㈱からディック㈱に債権譲渡された事案における平成23年9月30日最高裁判所第二小法廷判決の論理をそのまま踏襲し,マルフク㈱からディック㈱に債権譲渡された事案については,ディック㈱(CFJ)に対する過払金返還債務の承継を認めませんでした。

 両判決の全文は,それぞれ,「マルフクからディックへの債権譲渡事案での平成23年7月7日最高裁第一小法廷判決」「マルフクからディックへの債権譲渡事案での平成23年7月8日最高裁第二小法廷判決」をご覧下さい。


② タイヘイ㈱からディック㈱に債権譲渡された事案
 上記「過払金返還債務の承継 1」における「② タイヘイ㈱からディック㈱に債権譲渡された事案」においては,平成23年3月22日最高裁判所第三小法廷判決が出ております。
 
 判決の全文は,「タイヘイからディックへの債権譲渡事案での過払金返還債務の承継に関する平成23年3月22日最高裁判所第三小法廷判決」をご覧下さい。

 原審の確定した事実関係の概要等は以下のとおりです(借入日を別にすれば,この事件についての顧客だけでなく,タイヘイ㈱と取引をしていた顧客に共通するものばかりです。/なお,わかりやすくするために,「被上告人」を 「顧客(消費者)」,「A」を「タイヘイ㈱」,「上告人」を「ディック㈱(CFJ)」と書き換えています。)。

 (1) 顧客(消費者)は,平成元年3月8日,タイヘイ㈱との間で,金銭消費貸借に係る基本契約を締結し,以後,継続的に金銭の貸付けと弁済が繰り返される取引を行った。
(2)タイヘイ㈱は,平成14年1月29日,ディック㈱(CFJ)との間で,同年2月28日午後1時を契約の実行(クロージング)の日時(以下「クロージング日」という。)として,タイヘイ㈱の消費者ローン事業に係る貸金債権等の資産(以下「譲渡対象資産」という。)を一括してディック㈱(CFJ)に売却する旨の契約(以下「本件譲渡契約」という。)を締結した。
 本件譲渡契約は,第1.3条において,ディック㈱(CFJ)は,譲渡対象資産に含まれる契約に基づき生ずる義務のすべて(クロージング日以降に発生し,かつ,クロージング日以降に開始する期間に関するものに限る。)を承継する旨を,第1.4条(タイヘイ㈱)において,ディック㈱(CFJ)は,第9.6条(b)に反しないで,譲渡対象資産に含まれる貸金債権の発生原因たる金銭消費貸借契約上のタイヘイ㈱の義務又は債務(支払利息の返還請求権を含む。)を承継しない旨を定め,第9.6条(b)においては,「買主は,超過利息の支払の返還請求のうち,クロージング日以後初めて書面により買主に対して,または買主および売主に対して主張されたものについては,自らの単独の絶対的な裁量により,自ら費用および経費を負担して,これを防禦,解決または履行する。買主は,かかる請求に関して売主からの補償または負担を請求しない。」と定める。
(3)顧客(消費者)は,平成14年3月6日から同年5月17日まで,ディック㈱(CFJ)に対し,顧客(消費者)とタイヘイ㈱との間の金銭消費貸借取引に係る借入金の弁済を行った。
(4)顧客(消費者)は,顧客(消費者)とタイヘイ㈱との間の金銭消費貸借取引に係る過払金返還債務(以下「本件債務」という。)はディック㈱(CFJ)に承継されると主張して,顧客(消費者)とディック㈱(CFJ)との間の別個の金銭消費貸借取引により生じた過払金と併せ,その返還等を求めている。

 原審(名古屋高等裁判所)は,上記の事実関係のもとで,ディック㈱(CFJ)に過払金返還債務の承継を認めたのですが,上記最高裁判決は,次のように述べ,ディック㈱(CFJ)に過払金返還債務の承継を認めませんでした。

 前記事実関係によれば,本件譲渡契約は,第1.3条及び第1.4条(a)において,ディック㈱(CFJ)は本件債務を承継しない旨を明確に定めるのであって,これらの条項と対照すれば,本件譲渡契約の第9.6条(b)が,ディック㈱(CFJ)において第三者弁済をする場合における求償関係を定めるものであることは明らかであり,これが置かれていることをもって,ディック㈱(CFJ)が本件債務を重畳的に引き受け,これを承継したと解することはできない。
 そして,貸金業者(以下「譲渡業者」という。)が貸金債権を一括して他の貸金業者(以下「譲受業者」という。)に譲渡する旨の合意をした場合において,譲渡業者の有する資産のうち何が譲渡の対象であるかは,上記合意の内容いかんによるというべきであり,それが営業譲渡の性質を有するときであっても,借主と譲渡業者との間の金銭消費貸借取引に係る契約上の地位が譲受業者に当然に移転すると解することはできないところ,上記のとおり,本件譲渡契約は,ディック㈱(CFJ)が本件債務を承継しない旨を明確に定めるのであって,これが,顧客(消費者)とタイヘイ㈱との間の金銭消費貸借取引に係る契約上の地位の移転を内容とするものと解する余地もない。

 そして,先に触れたように,マルフク㈱からディック㈱に債権譲渡された事案においても上記論理が踏襲されたことから,「① マルフク㈱からディック㈱に債権譲渡された事案」「② タイヘイ㈱からディック㈱に債権譲渡された事案」のいずれについても,過払金返還債務の承継が認められなかったのです。

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