過払金返還債務の承継 3

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2011.10.4
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過払金返還債務の承継 3

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 過払金返還債務の承継をめぐる問題については,「過払金返還債務の承継 1」に記載したとおりです。

 そして,上記「過払金返還債務の承継 1」のうち,「① マルフク㈱からディック㈱に債権譲渡された事案」「② タイヘイ㈱からディック㈱に債権譲渡された事案」について,過払金返還債務の承継が認められなかったのは,「過払金返還債務の承継 2」に記載したとおりです。

③ ㈱クオークローン(㈱タンポート/㈱クラヴィス)からプロミス㈱に債権譲渡された事案
 このような状況で,「③ ㈱クオークローン(㈱タンポート/㈱クラヴィス)からプロミス㈱に債権譲渡された事案」についての最高裁判決が出ました。

 判決の全文は,「「クオークローン(タンポート/クラヴィス)からプロミスへの債権譲渡事案での過払金返還債務の承継に関する平成23年9月30日最高裁判所第二小法廷判決」をご覧ください。

 この判決を理解する前提として,理解していただきたいクオークローン(タンポート/クラヴィス)の沿革等は次のとおりです(ウィキペディアの記載を引用しています。)。

1975年(昭和50)7月18日  リッチ㈱設立
2000年(平成12)5月19日  株式交換し,プロミス㈱の子会社となる
2002年(平成14)4月 1日  ㈱シンコウ及び東和商事㈱を吸収合併し,商号をリッチ
                 ㈱から㈱ぷらっとに変更
2005年(平成17)6月13日  商号を㈱クオークローンに変更
2007年(平成19)9月28日  貸金業関連法改正の影響を受け,全店舗閉店
2007年(平成19)12月1日  商号を㈱タンポートに変更
2009年(平成21) 4月1日  親会社のプロミス㈱が全株式を譲渡したことにより,ネオ
                 ラインキャピタル㈱の子会社となる
2009年(平成21) 5月1日  ㈱クラヴィスに商号変更

 ネオラインキャピタル㈱傘下の消費者金融会社は過払金の返還にほとんど応じないことで有名で,㈱クラヴィスも,私の知る限りでは,請求額の1割程度の返還にしか応じていないようです。
 プロミス㈱がネオラインキャピタル㈱への株式譲渡や貸付債権の譲渡をしたのは,プロミス㈱の100%子会社であった㈱クオークローン(㈱タンポート)において生じた過払金返還債務を切り離す目的であったとしか考えにくいところです。


 上記最高裁判決において,原審の確定した事実関係の概要等は以下のとおりです(借入日を別にすれば,この事件についての顧客だけでなく,㈱クオークローン(㈱タンポート)と取引をしていた顧客に共通するものばかりです。/なお,わかりやすくするために,「被上告人」を 「顧客(消費者)」,「A」を「㈱クオークローン(㈱タンポート)」,「上告人」を「プロミス㈱」と書き換えています。)。

(1) 顧客(消費者)は,㈱クオークローン(㈱タンポート)との間で,金銭消費貸借取引に係る基本契約を締結し,これに基づき,平成5年7月6日から平成19年8月1日までの間,第1審判決別紙計算書1-①の番号1から103までの「借入金額」欄及び「弁済額」欄記載のとおり,継続的な金銭消費貸借取引を行った(以下,この取引を「本件取引1」という。)。
 本件取引1につき,制限超過部分を元本に充当すると,同日時点で過払金が発生していた。
(2) プロミス㈱は,グループ会社のうち,国内の消費者金融子会社の再編を目的として,平成19年6月18日,プロミス㈱の完全子会社であった㈱クオークローン(㈱タンポート)外1社との間で上記再編に係る基本合意書を取り交わし,㈱クオークローン(㈱タンポート)が顧客に対して有する貸金債権をプロミス㈱に移行し,㈱クオークローン(㈱タンポート)の貸金業を廃止することとした。
(3) 上記(2)の債権移行を実行するため,プロミス㈱は,㈱クオークローン(㈱タンポート)との間で,平成19年6月18日,要旨次のとおりの業務提携契約(以下「本件業務提携契約」という。)を締結した。
 ア ㈱クオークローン(㈱タンポート)の顧客のうちプロミス㈱に債権を移行させることを勧誘する顧客は,プロミス㈱及び㈱クオークローン(㈱タンポート)の協議により定めるものとし,そのうち希望する顧客との間で,プロミス㈱が金銭消費貸借取引に係る基本契約を締結する(以下,プロミス㈱との間で上記基本契約を締結した㈱クオークローン(㈱タンポート)の顧客を「切替顧客」という。)。
 イ ㈱クオークローン(㈱タンポート)が切替顧客に対して負担する利息返還債務,同債務に附帯して発生する経過利息の支払債務その他同社が切替顧客に対して負担する一切の債務(以下「過払金等返還債務」という。)について,プロミス㈱及び㈱クオークローン(㈱タンポート)が連帯してその責めを負うものとし,この連帯債務の負担部分の割合は,プロミス㈱が0割,㈱クオークローン(㈱タンポート)が10割とする(以下,この定めを「本件債務引受条項」という。)。
 ウ プロミス㈱及び㈱クオークローン(㈱タンポート)は,切替顧客に対し,今後の全ての紛争に関する申出窓口をプロミス㈱とする旨を告知する(以下,この定めを「本件周知条項」という。)。プロミス㈱は,切替顧客からの過払金等返還債務の請求に対しては,申出窓口の管理者として善良なる注意をもって対応する。
(4) 顧客(消費者)は,本件取引1に係る㈱クオークローン(㈱タンポート)の債権の移行を求めるプロミス㈱の勧誘に応じて,平成19年8月1日,プロミス㈱との間で金銭消費貸借取引に係る基本契約(以下「本件切替契約」という。)を締結した。この際,顧客(消費者)は,プロミス㈱から,プロミス㈱グループの再編により,㈱クオークローン(㈱タンポート)に対して負担する債務をプロミス㈱からの借入れにより完済する切替えについて承諾すること,本件取引1に係る約定利息を前提とする残債務(以下「約定残債務」という。)が48万5676円であることを確認し,これを完済するため,同額を㈱クオークローン(㈱タンポート)名義の口座に振り込むことをプロミス㈱に依頼すること,本件取引1に係る紛争等の窓口が今後プロミス㈱となることに異議はないことなどが記載された「残高確認書兼振込代行申込書」(以下「本件申込書」という。)を示され,これに署名してプロミス㈱に差し入れた。
(5) 本件申込書の差入れを受け,プロミス㈱は,平成19年8月1日,顧客(消費者)に対し,本件切替契約に基づき,本件取引1に係る約定残債務金額に相当する48万5676円を貸し付けた上,同額を㈱クオークローン(㈱タンポート)名義の口座に振込送金した(第1審判決別紙計算書1-①の番号104及び105の取引に当たる。)。
 そして,顧客(消費者)は,プロミス㈱に対し,同年9月2日から平成21年2月14日までの間,同計算書の番号106から123までの「弁済額」欄記載のとおりの弁済をした(以下,この弁済に係る取引を「本件取引2」という。)。
(6) プロミス㈱と㈱クオークローン(㈱タンポート)は,平成20年12月15日,本件業務提携契約のうち本件債務引受条項を変更し,過払金等返還債務につき,㈱クオークローン(㈱タンポート)のみが負担し,プロミス㈱は切替顧客に対し何らの債務及び責任を負わないことを内容とする契約(以下「本件変更契約」という。)を締結した。


 この事実関係のもとで,上記最高裁判決は次のように述べています。
 
 前記事実関係によれば,プロミス㈱は,グループ会社のうち国内の消費者金融子会社の再編を目的として,プロミス㈱の完全子会社である㈱クオークローン(㈱タンポート)の貸金業を廃止し,これをプロミス㈱に移行,集約するために本件業務提携契約を締結したのであって,上記の貸金業の移行,集約を実現し,円滑に進めるために,本件債務引受条項において,プロミス㈱が㈱クオークローン(㈱タンポート)の顧客に対する過払金等返還債務を併存的に引き受けることが,また,本件周知条項において,㈱クオークローン(㈱タンポート)の顧客である切替顧客に対し,当該切替顧客と㈱クオークローン(㈱タンポート)との間の債権債務に関する紛争については,単に紛争の申出窓口になるにとどまらず,その処理についてもプロミス㈱が全て引き受けることとし,その旨を周知することが,それぞれ定められたものと解される。
 プロミス㈱は,上記のような本件業務提携契約を前提として,㈱クオークローン(㈱タンポート)の顧客であった顧客(消費者)に対し,本件切替契約がプロミス㈱のグループ会社の再編に伴うものであることや,本件取引1に係る紛争等の窓口が今後プロミス㈱になることなどが記載された本件申込書を示して,プロミス㈱との間で本件切替契約を締結することを勧誘しているのであるから,プロミス㈱の意図は別にして,上記勧誘に当たって表示されたプロミス㈱の意思としては,これを合理的に解釈すれば,顧客(消費者)が上記勧誘に応じた場合には,プロミス㈱が,顧客(消費者)と㈱クオークローン(㈱タンポート)との間で生じた債権を全て承継し,債務を全て引き受けることをその内容とするものとみるのが相当である。
 そして,顧客(消費者)は,上記の意思を表示したプロミス㈱の勧誘に応じ,本件申込書に署名してプロミス㈱に差し入れているのであるから,顧客(消費者)もまた,㈱クオークローン(㈱タンポート)との間で生じた債権債務をプロミス㈱が全てそのまま承継し,又は引き受けることを前提に,上記勧誘に応じ,本件切替契約を締結したものと解するのが合理的である。
 本件申込書には,㈱クオークローン(㈱タンポート)に対して負担する債務をプロミス㈱からの借入れにより完済する切替えについて承諾すること,本件取引1に係る約定残債務の額を確認し,これを完済するため,同額を㈱クオークローン(㈱タンポート)名義の口座に振り込むことを依頼することも記載されているが,本件申込書は,上記勧誘に応じて差し入れられたものであり,実際にも,顧客(消費者)がプロミス㈱から借入金を受領して,これをもって自ら㈱クオークローン(㈱タンポート)に返済するという手続が執られることはなく,プロミス㈱とその完全子会社である㈱クオークローン(㈱タンポート)との間で直接送金手続が行われたにすぎない上に,上記の記載を本件申込書の他の記載部分と対照してみるならば,顧客(消費者)は,本件取引1に基づく約定残債務に係る㈱クオークローン(㈱タンポート)の債権をプロミス㈱に承継させるための形式的な会計処理として,㈱クオークローン(㈱タンポート)に対する約定残債務相当額をプロミス㈱から借り入れ,その借入金をもって上記約定残債務相当額を弁済するという処理を行うことを承諾したにすぎないものと解される。
 以上の事情に照らせば,顧客(消費者)とプロミス㈱とは,本件切替契約の締結に当たり,プロミス㈱が,顧客(消費者)との関係において,本件取引1に係る債権を承継するにとどまらず,債務についても全て引き受ける旨を合意したと解するのが相当であり,この債務には,過払金等返還債務も含まれていると解される。

 したがって,顧客(消費者)が上記合意をしたことにより,論旨が指摘するような第三者のためにする契約の性質を有する本件債務引受条項について受益の意思表示もされていると解することができる。そして,プロミス㈱が顧客(消費者)と上記のとおり合意した以上,その後,プロミス㈱と㈱クオークローン(㈱タンポート)との間において本件変更契約が締結されたからといって,上記合意の効力が左右される余地はなく,また,顧客(消費者)が,本件取引1に基づく約定残債務相当額をプロミス㈱から借り入れ,その借入金をもって本件取引1に基づく約定残債務を完済するという会計処理は,㈱クオークローン(㈱タンポート)からプロミス㈱に対する貸金債権の承継を行うための形式的な会計処理にとどまるものというべきであるから,本件取引1と本件取引2とは一連のものとして過払金の額を計算すべきであることは明らかである。
 したがって,プロミス㈱は,顧客(消費者)に対し,本件取引1と本件取引2とを一連のものとして制限超過部分を元本に充当した結果生ずる過払金につき,その返還に係る債務を負うというべきである。

 上記最高裁判決は,原審に差し戻していますが,それは,過払金の額等につきさらに審理を尽くさせることを理由とするもので,上記判断には一切の例外がありません。
 そのため,「③ ㈱クオークローン(㈱タンポート/㈱クラヴィス)からプロミス㈱に債権譲渡された事案」においては,過払金返還債務の承継が認められることになりました。

 この「③ ㈱クオークローン(㈱タンポート/㈱クラヴィス)からプロミス㈱に債権譲渡された事案」における訴訟は,これまで,私も訴状だけで10頁以上にもわたり理論構成を述べたり,この問題についてのありとあらゆる資料を集めて裁判所に分厚い証拠資料を提出したりと苦労が絶えなかったのですが,今後はこのような苦労をしなくて済み,ほっとしております。

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