(3)後遺症(後遺障害)概念の重要性

(3)後遺症(後遺障害)概念の重要性
ア 後遺症(後遺障害)とはなにか
(ア) 世間一般での後遺症概念
(イ) 交通事故事件でいう後遺症概念
世間一般でいわれている後遺症のうち,自賠法施行令別表第1及び別表第2に定める後遺障害等級表に該当するものだけが,交通事故事件でいう後遺症(後遺障害)として扱われるのです。
(ウ) 交通事故事件でいう後遺症概念の詳細
イ 後遺障害等級
等 級 | 介 護 を 要 す る 後 遺 障 害 | 保 険 金 額 |
労 働 能 力 喪失率 |
---|---|---|---|
第1級 | 1 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し,常に介護を要するもの 2 胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し,常に介護を要するもの |
4,000万円 | 100/100 |
第2級 | 1 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し,随時介護を要するもの 2 胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し,随時介護を要するもの |
3,000万円 | 100/100 |
等 級 | 後 遺 障 害 | 保 険 金 額 |
労 働 能 力 喪失率 |
---|---|---|---|
第1級 | 1 両眼が失明したもの 2 咀嚼及び言語の機能を廃したもの 3 両上肢をひじ関節以上で失ったもの 4 両上肢の用を全廃したもの 5 両下肢をひざ関節以上で失ったもの 6 両下肢の用を全廃したもの |
3,000万円 | 100/100 |
第2級 | 1 1眼が失明し,他眼の視力が0.02 以下になったもの 2 両眼の視力が0.02以下になったもの 3 両上肢を手関節以上で失ったもの 4 両下肢を足関節以上で失ったもの |
3,000万円 | 100/100 |
第3級 | 1 1眼が失明し,他眼の視力が0.06以下になったもの 2 咀嚼又は言語の機能を廃したもの 3 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し,終身労務に服することができないもの 4 胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し,終身労務に服することができないもの 5 両手の手指の全部を失ったもの |
2,219万円 | 100/100 |
第4級 | 1 両眼の視力が0.06以下になったもの 2 咀嚼及び言語の機能に著しい障害を残すもの 3 両耳の聴力を全く失ったもの 4 1上肢をひじ関節以上で失ったもの 5 1下肢をひざ関節以上で失ったもの 6 両手の手指の全部の用を廃したもの 7 両足をリスフラン関節以上で失ったもの |
1,889万円 | 92/100 |
第5級 | 1 1眼が失明し,他眼の視力が0.1以下になったもの 2 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し,特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの 3 胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し,特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの 4 1上肢を手関節以上で失ったもの 5 1下肢を足関節以上で失ったもの 6 1上肢の用を全廃したもの 7 1下肢の用を全廃したもの 8 両足の足指の全部を失ったもの |
1,574万円 | 79/100 |
第6級 | 1 両眼の視力が0.1以下になったもの 2 咀嚼又は言語の機能に著しい障害を残すもの 3 両耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になったもの 4 一耳の聴力を全く失い,他耳の聴力が40センチメートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になったもの 5 脊柱に著しい変形又は運動障害を残すもの 6 1上肢の3大関節中の二関節の用を廃したもの 7 1下肢の3大関節中の2関節の用を廃したもの 8 1手の5の手指又はおや指を含み4の手指を失ったもの |
1,926万円 | 67/100 |
第7級 | 1 1眼が失明し,他眼の視力が0.6以下になったもの 2 両耳の聴力が四十センチメートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になったもの 3 1耳の聴力を全く失い,他耳の聴力が1メートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になったもの 4 神経系統の機能又は精神に障害を残し,軽易な労務以外の労務に服することができないもの 5 胸腹部臓器の機能に障害を残し,軽易な労務以外の労務に服することができないもの 6 1手のおや指を含み3の手指を失ったもの又はおや指以外の4の手指を失ったもの 7 1手の5の手指又はおや指を含み4の手指の用を廃したもの 8 1足をリスフラン関節以上で失ったもの 9 1上肢に偽関節を残し,著しい運動障害を残すもの 10 1下肢に偽関節を残し,著しい運動障害を残すもの 11 両足の足指の全部の用を廃したもの 12 外貌に著しい醜状を残すもの 13 両側の睾丸を失ったもの |
1,051万円 | 56/100 |
第8級 | 1 1眼が失明し,又は1眼の視力が0.02以下になったもの 2 脊柱に運動障害を残すもの 3 1手のおや指を含み2の手指を失ったもの又はおや指以外の3の手指を失ったもの 4 1手のおや指を含み3の手指の用を廃したもの又はおや指以外の4の手指の用を廃したもの 5 1下肢を5センチメートル以上短縮したもの 6 1上肢の3大関節中の1関節の用を廃したもの 7 1下肢の3大関節中の1関節の用を廃したもの 8 1上肢に偽関節を残すもの 9 1下肢に偽関節を残すもの 10 1足の足指の全部を失ったもの |
819万円 | 45/100 |
第9級 | 1 両眼の視力が0.6以下になったもの 2 1眼の視力が0.06以下になったもの 3 両眼に半盲症,視野狭窄又は視野変状を残すもの 4 両眼のまぶたに著しい欠損を残すもの 5 鼻を欠損し,その機能に著しい障害を残すもの 6 咀及び言語の機能に障害を残すもの 7 両耳の聴力が1メートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になったもの 8 1 耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になり,他耳の聴力が1メートル以上の距離では普通の話声を解することが困難である程度になったもの 9 1耳の聴力を全く失ったもの 10 神経系統の機能又は精神に障害を残し,服することができる労務が相当な程度に制限されるもの 11 胸腹部臓器の機能に障害を残し,服することができる労務が相当な程度に制限されるもの 12 1手のおや指又はおや指以外の2の手指を失ったもの 13 1手のおや指を含み二の手指の用を廃したもの又はおや指以外の3の手指の用を廃したもの 14 1足の第1の足指を含み2以上の足指を失ったもの 15 1足の足指の全部の用を廃したもの 16 外貌に相当程度の醜状を残すもの 17 生殖器に著しい障害を残すもの |
616万円 | 35/100 |
第10級 | 1 1眼の視力が0.1以下になったもの 2 正面を見た場合に複視の症状を残すもの 3 咀嚼又は言語の機能に障害を残すもの 4 14歯以上に対し歯科補綴を加えたもの 5 両耳の聴力が一メートル以上の距離では普通の話声を解することが困難である程度になったもの 6 1耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になったもの 7 1手のおや指又はおや指以外の2の手指の用を廃したもの 8 1下肢を3センチメートル以上短縮したもの 9 1足の第1の足指又は他の4の足指を失ったもの 10 1上肢の3大関節中の1関節の機能に著しい障害を残すもの 11 1下肢の3大関節中の1関節の機能に著しい障害を残すもの |
461万円 | 27/100 |
第11級 | 1 両眼の眼球に著しい調節機能障害又は運動障害を残すもの 2 両眼のまぶたに著しい運動障害を残すもの 3 1眼のまぶたに著しい欠損を残すもの 4 10歯以上に対し歯科補綴を加えたもの 5 両耳の聴力が1メートル以上の距離では小声を解することができない程度になったもの 6 1耳の聴力が40センチメートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になったもの 7 脊柱に変形を残すもの 8 1手のひとさし指,なか指又はくすり指を失ったもの 9 1足の第1の足指を含み2以上の足指の用を廃したもの 10 胸腹部臓器の機能に障害を残し,労務の遂行に相当な程度の支障があるもの |
331万円 | 20/100 |
第12級 | 1 1眼の眼球に著しい調節機能障害又は運動障害を残すもの 2 1眼のまぶたに著しい運動障害を残すもの 3 7歯以上に対し歯科補綴を加えたもの 4 1耳の耳殻の大部分を欠損したもの 5 鎖骨,胸骨,ろく骨,けんこう骨又は骨盤骨に著しい変形を残すもの 6 1上肢の3大関節中の1関節の機能に障害を残すもの 7 1下肢の3大関節中の1関節の機能に障害を残すもの 8 長管骨に変形を残すもの 9 1手のこ指を失ったもの 10 1手のひとさし指,なか指又はくすり指の用を廃したもの 11 1足の第2の足指を失ったもの,第2の足指を含み2の足指を失ったもの又は第3の足指以下の3の足指を失ったもの 12 1足の第1の足指又は他の4の足指の用を廃したもの 13 局部に頑固な神経症状を残すもの 14 外貌に醜状を残すもの |
224万円 | 14/100 |
第13級 | 1 1眼の視力が0.6以下になったもの 2 正面以外を見た場合に複視の症状を残すもの 3 1眼に半盲症,視野狭窄又は視野変状を残すもの 4 両眼のまぶたの一部に欠損を残し又はまつげはげを残すもの 5 5歯以上に対し歯科補綴を加えたもの 6 1手のこ指の用を廃したもの 7 1手のおや指の指骨の一部を失ったもの 8 1下肢を1センチメートル以上短縮したもの 9 1足の第3の足指以下の1又は2の足指を失ったもの 10 1足の第2の足指の用を廃したもの,第2の足指を含み2の足指の用を廃したもの又は第3の足指以下の3の足指の用を廃したもの 11 胸腹部臓器の機能に障害を残すもの |
139万円 | 9/100 |
第14級 | 1 1眼のまぶたの一部に欠損を残し又はまつげはげを残すもの 2 3歯以上に対し歯科補綴を加えたもの 3 1耳の聴力が1メートル以上の距離では小声を解することができない程度になったもの 4 上肢の露出面にてのひらの大きさの醜いあとを残すもの 5 下肢の露出面にてのひらの大きさの醜いあとを残すもの 6 1手のおや指以外の手指の指骨の一部を失ったもの 7 1手のおや指以外の手指の遠位指節間関節を屈伸することができなくなったもの 8 1足の第3の足指以下の1又は2の足指の用を廃したもの 9 局部に神経症状を残すもの |
75万円 | 5/100 |
ウ 後遺症(後遺障害)と認められない場合
(ア) 非該当と判断される意味
(イ) 非該当と判断された場合でも認められる損害
(ウ) 非該当と判断された場合には認められない損害
エ 後遺障害等級認定の実際
(ア) 後遺障害等級認定を行う機関
(イ) 損害保険料率算出機構の公平性
(ウ) 損害保険料率算出機構による認定判断方法
(エ) 後遺障害等級認定判断の問題
オ より高い後遺障害等級獲得のために
(ア) 後遺障害診断書への詳細な記載
(イ) 労災保険給付請求との併用
(ウ) 異議申立ての活用
*15 「交通事故事件における後遺障害の認定」
自賠法16条の3は,「保険会社は,保険金等を支払うときは,死亡,後遺障害及び傷害の別に国土交通大臣及び内閣総理大臣が定める支払基準(以下「支払基準」という。)に従つてこれを支払わなければならない。」と規定しています。
これを受けて定められた通達である「自動車損害賠償責任保険の保険金等及び自動車損害賠償責任共済の共済金等の支払基準」(平成13年12月21日付金融庁,国土交通省告示第1号)においては,「第3 後遺障害による損害」の項において,「後遺障害による損害は,逸失利益及び慰謝料等とし,自動車損害賠償保障法施行令第2条並びに別表第1及び別表第2に定める等級に該当する場合に認める。
等級の認定は,原則として労働者災害補償保険における障害の等級認定の基準に準じて行う。」と記載されています。
*16 「相当因果関係」
相当因果関係とは,交通事故と因果関係のある損害のうち,賠償されなければならない範囲を表す用語です。
因果関係は,「あれなくばこれなし」というもので,交通事故が発生している以上,すべての損害は交通事故と因果関係があることになってしまいかねませんが(無限に広がってしまいかねない。),すべての損害のうち,相当と考えられる範囲ものだけに因果関係を限定するために,この「相当因果関係」という用語が用いられます。
*17 「き損」
き損とは,欠けてそこなわれることをいいます。