(2)労働能力喪失率とは何か

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(2) 労働能力喪失率とは何か

交通事故により後遺症(後遺障害)が残存した場合,その分働けなくなって収入が下がるであろうことが予測されます。
このような状況について,交通事故事件においては,労働能力を喪失したと捉えられています。
後遺症(後遺障害)が重篤なものであれば(例えば寝たきり状態を余儀なくされた場合)にはまったく労働ができないでしょうから,100%の労働能力を喪失したと考えていいでしょう(労働能力喪失率100%)。
もっとも,さほど重篤でない症状の場合には,多少働くことが制限されるにすぎないとして,それほど高い労働能力喪失を認めない扱いになっています。

自賠法施行令別表第1及び第2の後遺障害等級が認定された場合,その等級が認定された場合にはどれだけ働けなくなったと扱うか,というのを決めるのが,「労働能力喪失率*23」です。

この労働能力喪失率をいくらにするかについては,「労働省労働基準局長通牒(昭和32年7月2日付け基発第551号)別表労働能力喪失表」に基づき,自賠法施行令別表第2第4級に該当する場合には92%,同第5級に該当する場合には79%,というように扱われています。
 「労働省労働基準局長通牒(昭和32年7月2日付け基発第551号)別表労働能力喪失表」に後遺障害等級表を加えた表が,以下の各表となります。
【別表第一】
等 級 介 護 を 要 す る 後 遺 障 害 労 働
能 力
喪失率
第1級

1 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し,常に介護を要するもの

2 胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し,常に介護を要するもの

100/100
第2級

1 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し,随時介護を要するもの

2 胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し,随時介護を要するもの

100/100
備 考  各等級の後遺障害に該当しない後遺障害であって,各等級の後遺障害に相当するものは,当該等級の後遺障害とする。

【別表第二】
等 級 後 遺 障 害 労 働
能 力
喪失率
第1級

1 両眼が失明したもの

2 咀嚼及び言語の機能を廃したもの

3 両上肢をひじ関節以上で失ったもの

4 両上肢の用を全廃したもの

5 両下肢をひざ関節以上で失ったもの

6 両下肢の用を全廃したもの

100/100
第2級

1 1眼が失明し,他眼の視力が0.02 以下になったもの

2 両眼の視力が0.02以下になったもの

3 両上肢を手関節以上で失ったもの

4 両下肢を足関節以上で失ったもの

100/100
第3級

1 1眼が失明し,他眼の視力が0.06以下になったもの

2 咀嚼又は言語の機能を廃したもの

3 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し,終身労務に服することができないもの

4 胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し,終身労務に服することができないもの

5 両手の手指の全部を失ったもの

100/100
第4級

1 両眼の視力が0.06以下になったもの

2 咀嚼及び言語の機能に著しい障害を残すもの

3 両耳の聴力を全く失ったもの

4 1上肢をひじ関節以上で失ったもの

5 1下肢をひざ関節以上で失ったもの

6 両手の手指の全部の用を廃したもの

7 両足をリスフラン関節以上で失ったもの

92/100
第5級

1 1眼が失明し,他眼の視力が0.1以下になったもの

2 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し,特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの

3 胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し,特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの

4 1上肢を手関節以上で失ったもの

5 1下肢を足関節以上で失ったもの

6 1上肢の用を全廃したもの

7 1下肢の用を全廃したもの

8 両足の足指の全部を失ったもの

79/100
第6級

1 両眼の視力が0.1以下になったもの

2 咀嚼又は言語の機能に著しい障害を残すもの

3 両耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になったもの

4 一耳の聴力を全く失い,他耳の聴力が40センチメートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になったもの

5 脊柱に著しい変形又は運動障害を残すもの

6 1上肢の3大関節中の二関節の用を廃したもの

7 1下肢の3大関節中の2関節の用を廃したもの

8 1手の5の手指又はおや指を含み4の手指を失ったもの

67/100
第7級

1 1眼が失明し,他眼の視力が0.6以下になったもの

2  両耳の聴力が四十センチメートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になったもの

3 1耳の聴力を全く失い,他耳の聴力が1メートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になったもの

4 神経系統の機能又は精神に障害を残し,軽易な労務以外の労務に服することができないもの

5 胸腹部臓器の機能に障害を残し,軽易な労務以外の労務に服することができないもの

6 1手のおや指を含み3の手指を失ったもの又はおや指以外の4の手指を失ったもの

7 1手の5の手指又はおや指を含み4の手指の用を廃したもの

8 1足をリスフラン関節以上で失ったもの

9 1上肢に偽関節を残し,著しい運動障害を残すもの

10 1下肢に偽関節を残し,著しい運動障害を残すもの

11 両足の足指の全部の用を廃したもの

12 外貌に著しい醜状を残すもの

13 両側の睾丸を失ったもの

56/100
第8級

1 1眼が失明し,又は1眼の視力が0.02以下になったもの

2 脊柱に運動障害を残すもの

3 1手のおや指を含み2の手指を失ったもの又はおや指以外の3の手指を失ったもの

4 1手のおや指を含み3の手指の用を廃したもの又はおや指以外の4の手指の用を廃したもの

5 1下肢を5センチメートル以上短縮したもの

6 1上肢の3大関節中の1関節の用を廃したもの

7 1下肢の3大関節中の1関節の用を廃したもの

8 1上肢に偽関節を残すもの

9 1下肢に偽関節を残すもの

10 1足の足指の全部を失ったもの

45/100
第9級

1 両眼の視力が0.6以下になったもの

2 1眼の視力が0.06以下になったもの

3 両眼に半盲症,視野狭窄又は視野変状を残すもの

4 両眼のまぶたに著しい欠損を残すもの

5 鼻を欠損し,その機能に著しい障害を残すもの

6 咀及び言語の機能に障害を残すもの

7 両耳の聴力が1メートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になったもの

8 1 耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になり,他耳の聴力が1メートル以上の距離では普通の話声を解することが困難である程度になったもの

9 1耳の聴力を全く失ったもの

10 神経系統の機能又は精神に障害を残し,服することができる労務が相当な程度に制限されるもの

11 胸腹部臓器の機能に障害を残し,服することができる労務が相当な程度に制限されるもの

12 1手のおや指又はおや指以外の2の手指を失ったもの

13 1手のおや指を含み二の手指の用を廃したもの又はおや指以外の3の手指の用を廃したもの

14 1足の第1の足指を含み2以上の足指を失ったもの

15 1足の足指の全部の用を廃したもの

16 外貌に相当程度の醜状を残すもの

17 生殖器に著しい障害を残すもの

35/100
第10級

1 1眼の視力が0.1以下になったもの

2 正面を見た場合に複視の症状を残すもの

3 咀嚼又は言語の機能に障害を残すもの

4 14歯以上に対し歯科補綴を加えたもの

5 両耳の聴力が一メートル以上の距離では普通の話声を解することが困難である程度になったもの

6 1耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になったもの

7 1手のおや指又はおや指以外の2の手指の用を廃したもの

8 1下肢を3センチメートル以上短縮したもの

9 1足の第1の足指又は他の4の足指を失ったもの

10 1上肢の3大関節中の1関節の機能に著しい障害を残すもの

11 1下肢の3大関節中の1関節の機能に著しい障害を残すもの

27/100
第11級

1 両眼の眼球に著しい調節機能障害又は運動障害を残すもの

2 両眼のまぶたに著しい運動障害を残すもの

3 1眼のまぶたに著しい欠損を残すもの

4 10歯以上に対し歯科補綴を加えたもの

5 両耳の聴力が1メートル以上の距離では小声を解することができない程度になったもの

6 1耳の聴力が40センチメートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になったもの

7 脊柱に変形を残すもの

8 1手のひとさし指,なか指又はくすり指を失ったもの

9 1足の第1の足指を含み2以上の足指の用を廃したもの

10 胸腹部臓器の機能に障害を残し,労務の遂行に相当な程度の支障があるもの

20/100
第12級

1 1眼の眼球に著しい調節機能障害又は運動障害を残すもの

2 1眼のまぶたに著しい運動障害を残すもの

3 7歯以上に対し歯科補綴を加えたもの

4 1耳の耳殻の大部分を欠損したもの

5 鎖骨,胸骨,ろく骨,けんこう骨又は骨盤骨に著しい変形を残すもの

6 1上肢の3大関節中の1関節の機能に障害を残すもの

7 1下肢の3大関節中の1関節の機能に障害を残すもの

8 長管骨に変形を残すもの

9 1手のこ指を失ったもの

10 1手のひとさし指,なか指又はくすり指の用を廃したもの

11 1足の第2の足指を失ったもの,第2の足指を含み2の足指を失ったもの又は第3の足指以下の3の足指を失ったもの

12 1足の第1の足指又は他の4の足指の用を廃したもの

13 局部に頑固な神経症状を残すもの

14 外貌に醜状を残すもの

14/100
第13級

1 1眼の視力が0.6以下になったもの

2 正面以外を見た場合に複視の症状を残すもの

3 1眼に半盲症,視野狭窄又は視野変状を残すもの

4 両眼のまぶたの一部に欠損を残し又はまつげはげを残すもの

5 5歯以上に対し歯科補綴を加えたもの

6 1手のこ指の用を廃したもの

7 1手のおや指の指骨の一部を失ったもの

8 1下肢を1センチメートル以上短縮したもの

9 1足の第3の足指以下の1又は2の足指を失ったもの

10 1足の第2の足指の用を廃したもの,第2の足指を含み2の足指の用を廃したもの又は第3の足指以下の3の足指の用を廃したもの

11 胸腹部臓器の機能に障害を残すもの

9/100
第14級

1 1眼のまぶたの一部に欠損を残し又はまつげはげを残すもの

2 3歯以上に対し歯科補綴を加えたもの

3 1耳の聴力が1メートル以上の距離では小声を解することができない程度になったもの

4 上肢の露出面にてのひらの大きさの醜いあとを残すもの

5 下肢の露出面にてのひらの大きさの醜いあとを残すもの

6 1手のおや指以外の手指の指骨の一部を失ったもの

7 1手のおや指以外の手指の遠位指節間関節を屈伸することができなくなったもの

8 1足の第3の足指以下の1又は2の足指の用を廃したもの

9 局部に神経症状を残すもの

5/100
備 考 1 視力の測定は,万国式試視力表による。
屈折異状のあるものについては,矯正視力について測定する。
2 手指を失ったものとは,おや指は指節間関節,その他の手指は近位指節間関節以上を失ったものをいう。
3 手指の用を廃したものとは,手指の末節骨の半分以上を失い,又は中手指節関節若しくは近位指節間関節(おや指にあつては,指節間関節)に著しい運動障害を残すものをいう。
4 足指を失ったものとは,その全部を失ったものをいう。
5 足指の用を廃したものとは,第1の足指は末節骨の半分以上,その他の足指は遠位指節間関節以上を失ったもの又は中足指節関節若しくは近位指節間関節(第1の足指にあつては,指節間関節)に著しい運動障害を残すものをいう。
6 各等級の後遺障害に該当しない後遺障害であつて,各等級の後遺障害に相当するものは,当該等級の後遺障害とする。


もっとも,自賠法に基づく被害者請求の場合はさておき,任意保険会社と交渉する際や交通事故事件訴訟(民事裁判)においては,上記基準が最重視されてはいるものの,絶対的なものとまでは扱われていません。

*23 「労働能力喪失率

交通事故事件訴訟(民事裁判)においては,「労働省労働基準局長通牒(昭和32年7月2日付け基発第551号)別表労働能力喪失表」を参考とし,被害者の職業,年齢,性別,後遺症の部位,程度,事故前後の稼働状況等を総合的に判断して具体的にあてはめて評価するものとされています(赤本参照)。
 民事訴訟においては,被害者側は,後遺障害等級認定に該当する労働能力喪失率を超える不利益が生じているとして当該後遺障害等級に該当する労働能力喪失率より高い労働能力喪失率を適用すべきと主張することがあります。
 他方,加害者(任意保険会社)側は,「現実に減収となっていない。」ことなどを理由に当該後遺障害等級に該当する労働能力喪失率より低い労働能力喪失率を適用すべきと主張することが多くなっています。
 こうして,「労働省労働基準局長通牒(昭和32年7月2日付け基発第551号)別表労働能力喪失表」に規定される労働能力喪失率を採用すべきか否かで,被害者側と加害者側(任意保険会社側)とで攻防が繰り広げられることが多くなっているのです。
 このように,被害者側としても,後遺障害等級認定に該当する労働能力喪失率を単純に認めてもらえるわけではないため,「労働省労働基準局長通牒(昭和32年7月2日付け基発第551号)別表労働能力喪失表」に規定される労働能力喪失率を認めてもらうためには努力を要することになります。
 また,被害者側において,「労働省労働基準局長通牒(昭和32年7月2日付け基発第551号)別表労働能力喪失表」に規定される労働能力喪失率よりも実際にはさらに高い労働能力喪失率が認められるべきであると主張・立証する場合には,その主張・立証を丹念に行って,裁判所を説得する必要があることになります。

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