(1)事故態様による過失相殺
ア 過失割合による賠償額の制限
交通事故事件においては,駐車中に追突されたような事故を除き,加害者に100%落ち度がある(被害者側に落ち度なし)と判断されるケースは稀です。
被害者側*28に落ち度があるとされる場合,その割合(過失割合)に応じて賠償額が制限されます。
イ 過失割合の判断
過失割合が具体的にどのように判断されるかについてはケース・バイ・ケースというほかありません。
実務では,赤本所収の事故類型別の表や別冊判例タイムズ『民事交通訴訟における過失相殺立の認定基準』(東京地裁民事交通訴訟研究会編)等を参考にして判断されています。
(2)被害者の素因を理由とする過失相殺(素因減額)
被害者に特異体質等があって損害が発生・拡大したと判断される場合にも,その被害者の肉体的・精神的要因(これを被害者の「素因」といいます。)が賠償額の減額要因として過失相殺の対象になることがあります(最判昭和63年4月21日/民集42巻4号243頁参照)。
*28 「被害者側の過失」
被害者自身に過失が認められない場合であっても,「被害者と身分上ないしは生活関係上一体をなすと認められるような関係にある者」に過失がある場合には,「被害者側」の過失として過失相殺の対象になることがあります(最判昭34年11月26日/民集13巻12号1573頁参照)。
たとえば,Xの運転する自動車とYの運転するトラックが衝突してXの妻が怪我した場合に,Xの妻がYに対し,自身に生じた損害について請求した際,Xの過失が被害者側の過失とされ,過失相殺の規定が適用されることがあります。
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