(2)後遺障害事案における「症状固定」概念の重要性

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 ア 「症状固定」とは何か  「症状固定」とは,傷病の症状が安定し,医学上一般に認められた医療を行っても,その医療効果が期待できなくなった状態のことをいう,法律上の概念です。  この「症状固定」について,詳しく述べると以下のようになります。  交通事故事件において,後遺障害と認められる要件の1つに,次の要件があります。  「負傷または疾病がなおったときに残存するもので当該傷病と相当因果関係があること」  (詳しくは,次項「(3)後遺症(後遺障害)概念の重要性」をご参照ください。)  そして,上記の「なおったとき」とは,次の場合をいうものとされています((財)労災サポートセンター『労災補償 障害認定必携』第14版67~68頁)。  (A)傷病に対して行われる医学上一般に承認された治療方法(以下「療養」という。)をもってしても,その効果が期待し得ない状態で,  かつ,  (B)残存する症状が,自然的経過によって到達すると認められる最終の状態(症状の固定)に達したとき  イ 「症状固定」概念の果たす役割  本来,医学的には,その傷害が「治癒した(なおった)」か,「治療中」であるかという状態しかありません。  しかし,そのように捉えてしまうと,交通事故発生からいつまで経っても適切な賠償(補償)がなされなくなってしまうおそれがあります。  そこで,障害程度の評価については,原則として療養効果が期待し得ない状態となり,症状が固定したときに行うものとしています((財)労災サポートセンター『労災補償 障害認定必携』第14版68頁)。  このように,交通事故発生から一定期間が経過したある特定の時期において,障害程度の評価を行った上で,適切に賠償(補償)がなされるように,「症状固定」という概念が用いられているのです。  そして,この「症状固定」になる前の時期と,「症状固定」となった後の時期とでは,以下のウ~オに述べるとおり,認められる損害項目が大きく異なることになります。  そのため,交通事故事件においては,この「症状固定」という概念の理解が欠かせないことになります。  ウ 症状固定日までに認められる可能性のある損害項目  ① 治療関係費  症状固定となると,傷病の症状が安定し,これ以上治療しても症状がよくならなず,治療しても無意味ということになります。  そのため,原則として,積極損害*9のうち,症状固定日後の「① 治療関係費」は損害とは認められません。  また,治療関係費さえ損害と認められない以上,症状固定日後は,積極損害のうち,以下の②~⑨についても損害と認められないことになります。  ② 付添看護費(将来看護費が認められる場合を除く)  ③ 入院雑費(将来の雑費が認められる場合を除く)  ④ 通院交通費・宿泊費等  ⑤ 医師等への謝礼  ⑥ 学生・生徒・幼児等の学習費,保育費,通学付添費等  ⑦ 装具・器具等購入費(相当期間で交換の必要があって将来発生するものを除く。)  ⑧ 家屋・自動車等改造費,調度品購入費  ⑨ 帰国費用  以上のような積極損害のほかに,交通事故事件の場合,消極損害*10をも損害として請求することができます。  ⑩ 休業損害  消極損害のうち,「⑩ 休業損害」*11については,症状固定日までの分が認められ,症状固定日後は損害とは認められません。  ⑪ 傷害慰謝料(入通院慰謝料)  また,消極損害のうち,「⑪ 傷害慰謝料(入通院慰謝料ともいいます。)」*12についても,症状固定日までの分が認められ,症状固定日後は損害とは認められません。  エ 症状固定日後に認められる可能性のある損害項目  ⑫ 後遺症による逸失利益  ⑬ 後遺症慰謝料  上記と異なり,症状固定日後にはじめて認められる損害もあります。  その1つが,消極損害のうちの1つである,「⑫ 後遺症による逸失利益」*13です。  また,もう1つが,同じく消極損害のうちの1つである,「⑬ 後遺症慰謝料」*14です。  オ 症状固定前後で認められる損害の図示  こうして,症状固定の前後で認められる損害を図示すると,以下のようになります。
*9 「積極損害」  積極損害とは,交通事故による損害のうち,事故によって被害者が支払わなければならなくなった損害のことをいいます。 *10 「消極損害」  事故が起こっていなかった場合に被害者が得ることのできるはずであった利益のことをいいます。 *11 「休業損害」  交通事故で怪我をした場合,怪我が治るまでの間に仕事を休まざるを得なかった期間について,事故がなければ得られたであろう収入のことをいいます。 *12 「傷害慰謝料(入通院慰謝料)」  傷害慰謝料(入通院慰謝料)とは,交通事故により入通院を余儀なくされたことにより認められる慰謝料のことをいいます。  その慰謝料額は入通院の期間をもとに決められます。 *13 「後遺症による逸失利益」  後遺症による逸失利益とは,交通事故により後遺障害が残存したために,その分働けなくなった(これを,労働能力喪失といいます。)ことにより,将来得ることのできる収入が下がるであろうことに対し,その下がるであろう金額を損害として認めるものです。 重大な後遺障害が残った場合には高い労働能力を喪失したと考えて,その分高額な逸失利益が認められることになっています。 *14 「後遺症慰謝料」  後遺症慰謝料とは,交通事故により後遺障害が残ることを余儀なくされたことにより認められる慰謝料のことをいいます。  重大な後遺障害が残った場合にはより多くの苦痛を受けたとして,その慰謝料額は後遺障害の程度をもとに決められます。

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