(2)労働能力喪失率とは何か

*23 「労働能力喪失率」 交通事故事件訴訟(民事裁判)においては,「労働省労働基準局長通牒(昭和32年7月2日付け基発第551号)別表労働能力喪失表」を参考とし,被害者の職業,年齢,性別,後遺症の部位,程度,事故前後の稼働状況等を総合的に判断して具体的にあてはめて評価するものとされています(赤本参照)。 民事訴訟においては,被害者側は,後遺障害等級認定に該当する労働能力喪失率を超える不利益が生じているとして当該後遺障害等級に該当する労働能力喪失率より高い労働能力喪失率を適用すべきと主張することがあります。 他方,加害者(任意保険会社)側は,「現実に減収となっていない。」ことなどを理由に当該後遺障害等級に該当する労働能力喪失率より低い労働能力喪失率を適用すべきと主張することが多くなっています。 こうして,「労働省労働基準局長通牒(昭和32年7月2日付け基発第551号)別表労働能力喪失表」に規定される労働能力喪失率を採用すべきか否かで,被害者側と加害者側(任意保険会社側)とで攻防が繰り広げられることが多くなっているのです。 このように,被害者側としても,後遺障害等級認定に該当する労働能力喪失率を単純に認めてもらえるわけではないため,「労働省労働基準局長通牒(昭和32年7月2日付け基発第551号)別表労働能力喪失表」に規定される労働能力喪失率を認めてもらうためには努力を要することになります。 また,被害者側において,「労働省労働基準局長通牒(昭和32年7月2日付け基発第551号)別表労働能力喪失表」に規定される労働能力喪失率よりも実際にはさらに高い労働能力喪失率が認められるべきであると主張・立証する場合には,その主張・立証を丹念に行って,裁判所を説得する必要があることになります。