Q2 他の手続ではなく自己破産手続を選択することにはどのようなメリット・デメリットがありますか?
A 債務整理を行うことによるメリット・デメリットについては,第1「債務整理全般」のQ2「債務整理を行った場合のメリット・デメリットにはどういうものがありますか?」をご参照下さい。
自己破産手続の最大のメリットは,財産がまったくないかほとんどない場合には債務をまったく支払わずにすみ(同時廃止事件),また財産が一定額以上ある場合でもその保有する財産の一部を破産管財人に引き渡すだけですむということにあります。
他方,自己破産手続特有のデメリットとしては,同時廃止事件と破産管財事件共通のものとして,大きく以下の4つがあります。
なお,同時廃止事件と破産管財事件の詳細については,
【個人の債務整理】(6)自己破産手続 > ウ 自己破産手続の概要をご参照下さい。
① 一定程度以上の財産を所有している場合,その財産を失ってしまうこと
20万円以上の財産を有している場合,破産管財事件となってしまい,手元に残してよい財産(自由財産)や破産手続開始決定後に得られる財産(新得財産)を除き,破産管財人に管理処分権が委ねられる(取り上げられてしまう)ことになります。
なお,破産した場合にどのような財産を手元に残すことができるかということの詳細については,
【個人の債務整理】(6)自己破産手続 エ 自由財産等をご参照下さい。
② 官報に掲載されてしまうこと
自己破産手続を選択されると,破産手続開始決定(裁判所が債務について支払不能であることを認めて決定したこと)が下されたとき等にその事実が官報に掲載されてしまいます。
ただし,ほとんどの方は官報をご覧にならないので,自己破産手続を選択した事実が周囲の方に発覚するということはまずあり得ません。
③ 資格制限
自己破産手続を選択されると,弁護士,警備員等一定の資格に基づいて就労している方は,資格制限に該当し,一定期間その資格に基づいて就労することができなくなってしまいます。
しかし,これらの資格制限についても,裁判所において破産手続開始決定を受けた後,復権を得る(免責許可決定を受ける)までの間に限られますので,通常は2~3か月間だけの制限となっています。
④ 特定の債務だけ支払うということができないこと
自己破産手続を選択されると,すべての債務についての支払を停止する必要がありますので,(連帯)保証人付の債務だけを支払うとか自動車を手元に残したいから自動車ローンのみ支払を継続するといったことはできなくなります(ただし,破産を申し立てる方以外の第三者が支払うことまで禁止されるわけではありません。)。
また,破産管財事件となった場合のデメリットとしては,さらに以下の2つがあります。
ただし,これらの制限も期間が制限されているので,それほど大きいデメリットとはいえないでしょう。
⑤ 郵便物の転送
破産手続開始決定後,少なくとも第1回債権者集会期日までの2~3か月の間,破産者宛て郵便物がすべて破産管財人に転送され,開封して財産隠し等がないかどうかチェックされた上で返却されます(破産法190条参照)。
⑥ 居住の制限
破産手続開始決定後,免責許可決定がおりる,少なくとも2~3か月の間,破産管財人の同意を得て裁判所の許可を受けなければ,居住地を離れて転居したり長期の旅行をしたりすることができません(破産法37条1項参照)。
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